美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

「あの人だれ?素敵な男性ね」

「あなた知らないの?彼が神崎造船の御曹司蓮様よ。まだあれで独身なのよ」

「ああ、神崎造船の御曹司だろ。まったく、サッサと結婚しろよな。どこへ行っても彼がいると女たちが大騒ぎだ」

 彼は知り合いに声をかけられたらしく、一瞬そちらを見て、手を上げてまたこちらに来た。

「……さくら、ごめん。待たせた?」

「……あ、ううん。大丈夫よ。私もぎりぎりだったの」

 椅子をウエイターに引かれた彼は上品に腰かけた。とにかく刺すような複数の視線を背中や横から感じる。怖い。

「……どうした?何かあった?」
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