美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 そのころ父に僕は聞いた。
 
「うちはどうして絵本と同じようなお城なの?」

「そうだな。蓮のじいじやパパのお仕事をするとこういうお城を作れるんだよ」

 そう真顔で答えられ、じゃあ僕もやると言ったのがこの仕事を継ごうと思った最初だった。

 神崎造船はサウスエリアの港を拠点としている。自前の船を使って西洋の建築関係資材や家具などを大量に輸入し、当時では考えられないくらいの洋風建築にしたのだ。

 中央には庭園があり、たくさんの季節の花も植えられている。もちろん、庭園の花も切ってたくさん邸内に飾られているが、女主人の母にとって息子の僕から送られる花は特別だったようだ。
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