美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

「なんにせよ、花束を気に入ってもらえたなら良かったよ」

「蓮、昨日私が話したことを気にしていたんでしょ。花言葉を考えて選んできたわね。私への日ごろの感謝をあなたの代わりに花が伝えてくれています」

 僕は驚いて母を見た。さすがだ。

「うん。櫻坂を東側に一本曲がったところの小さな花屋さんのものだよ。椎名が九州へ行く前に教えてくれたんだ。注文しておくと言われたんだが、たまには自分で選んでみるのも悪くないかもしれないと思って、さっき散歩しながら自分で注文に行ってきた」

 母はリビングにあるお気に入りのアンティークの椅子に腰掛けると、花束を覗きながら蓮に言った。

「蓮、お前知らなかったのね。あそこは小さいけどうちでずっと使っている花屋さんよ。亡くなったお義母さまの親友があちらの店の前の店主だったのよ。で、何?沙織さんに注文してきた花はどういうのにしたの?」
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