美しき造船王は愛の海に彼女を誘う
僕は驚いた。そんな繋がりが前からある店だったのか。
椎名に任せきりで何も知らなかったのだ。驚いている僕を見て、母がほくそ笑んでいる。ついため息をついた。
母はきっと……僕の意図をわかっているくせに聞いている。
「それは夕方のお楽しみにしておいて。母さんならどうせわかってるだろ?」
「沙織さんに通じるといいわねえ……ま、わからないようなら私がそれとなく匂わせてあげましょう」
「ありがとう、母さん」
僕が向かい側に座って紅茶を飲んでいるのを見ながら母は言った。
「それでもねえ、佑さんがあなたの縁談に困っているのは事実よ。船で外に出る前も、そろそろ限界だって悩んでいらしたわ」