美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

「……何かありました?」

 彼の表情に含むものがあった。私は嫌な予感がした。

「いや。もうこの話はおしまいだ」

 そう言うと、彼は私の手を引いて甲板に出た。日が沈んできていた。海に日の光が映えて綺麗だ。

 彼は私を抱き寄せ、私は彼の肩に頭を乗せながらその夕日が落ちていくのを見守った。

「日が落ちる瞬間に願い事をひとつしようか」

「……なにを?」

「俺の願い事はさくらと一緒にいられること。それだけだ」
< 217 / 403 >

この作品をシェア

pagetop