美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 佑とは僕の父親だ。僕は母を見て言った。

「母さんと父さんは大恋愛結婚じゃないか。それなのに息子の僕にはそんなこと言うの?ひどいな。父さんを止めてくれよ」

 僕の両親はベリが丘でも有名な恋愛結婚で知られる。

 ノースエリアにある大使館のロビーには寄り添った若い両親の幸せそうな笑顔の写真がいまでも飾られている。この大使館でのパーティーが両親の出会いの場だったからだ。

 ここベリが丘には外国の大使館があり、神崎造船はその大使館がある国の輸入関係の仕事を請け負っていた。

 ある日、大使館で行われたパーティに父は祖父の名代として神崎造船の代表として出席した。そこへ日本の外交官で出席していた祖父が自慢の娘である年頃の母を連れて来ていた。そこで父が母に一目惚れしたらしい。
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