美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 外交官の娘だった母は海外にいることも多く、父はなんとしても日本へいる間に口説き落とそうと決めて、母に猛アタックしたと聞いている。

 母方の祖父が母をパーティーに連れて行ったのには下心があった。

 実は財界の方からもお見合い話があって、そこで自然に会わせたらうまくいくのじゃないかと先方の父親と示し合わせて連れて行っていたのだ。

 祖父はのちに「まさか君の父親に娘を奪われる羽目になるとはあの時は思いもしなかったよ」と苦笑いしながら話してくれた。どうやら当時祖父は両親の結婚に反対していたようだ。

 父方の祖父が興した神崎造船はその頃まだ有名でなかった。のちに父が社長となり、日本でも有数の大きな造船会社に成長した。

 このノースエリアに洋風の屋敷を構えたのもその頃だ。母方の祖父は娘のほうが人を見る目があったと会う人によく言っていたらしい。
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