美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 今でもベリが丘の鴛鴦夫婦として有名だ。いつも母をエスコートして記念日には必ずオーベルージュで食事をしている二人を周囲は見ているからだ。

 そんな有名な恋愛結婚をしていながら、息子に見合いを強いるなんて父はおかしい。

「あら、あなたの年頃には私たちはすでに結婚してました。比べるのはどうかと思うんですけれどね」

「それはそうだけど、何もこのご時世、そんなに急がなくてもいいと思うんだ」

「まあ、そうね。私はあなたが選んでくる女性ならどんな人でもきっと大丈夫だろうと信じているわよ」

「ありがとう」

 * * * 

 夕方、黒のタキシードに着替えた蓮はドレスアップした母を連れて車に乗り込むと、花屋へ寄った。
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