美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 今日は午後から伯父の手術のため、彼女に店を任せている。

 あれからあのことには一切触れず、彼女は真面目に明るく働いている。前より元気なくらい。

 私が彼女の言葉で揺らいでいるのを面白がってると思う。

 私は見るからに元気がないからだ。それを知っていて何も声をかけてこない。

 お客様でさえ、昨日は顔色悪いですね大丈夫ですかと聞いてきた。彼女のことをどうして配属したのか、社長に聞く勇気もない。

 とにかく、損益計算をして彼に出資してもらった分を返そうと決めた。できることからやるしかない。誰に聞かれても恥ずかしくないようにするのが店長の私の務めだ。
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