美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 彼は私の気持ちを知っている。

 ここまで売れるようになったいい店を私に取られたくはないだろう。私の独立に条件を付けてくるか、阻むかだ。

 私が名取さんのために諦めようとしても、私の後ろに彼がいる。名取さんが芹那さんを送り込んできた理由の大元はそこにあるのだ。

 店を取られることを阻むため、マスコミにも名前の売れている彼女を私の下につけたのだ。

 つまり、彼女に店を運営させることも考えての人選だ。

 彼女が彼と昔関係があったことも知ってのことだろう。

 だが、縁談のことまで知っていたら寄越さなかったと思う。
< 265 / 403 >

この作品をシェア

pagetop