美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 このベリが丘は彼の会社の本拠地であり、住まいもある。迷惑をかけたくない。

 距離を置く。そして新しい世界へ出る。

 私が選んだ道はそれだった。決めると早かった。

 芹那さんには受賞を機にここを出て独立すると話した。店を頼みたいと相談した。

 彼女は快諾した。思った通り私を追い出し、店を手にできるのだ。嬉しそうだった。

 社長にその申し出をするため夜に東京の本社へ行った。

「清水、お前……ずいぶん痩せたな。大丈夫なのか……すまなかったな。そこまで悩んでいたとは」

「社長、遅い時間に申し訳ございません。お電話でお話していた件です」
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