美しき造船王は愛の海に彼女を誘う
退職願を出した。私は店を離れて自分の名前で仕事を受ける。独立するので退職させてほしいと頼んだ。
デスクの前で座る名取さんはそれをじっと見て、目の前に立つ私の顔を見上げた。
「受賞おめでとう。よくやった。やめることはない。お前の名前が芹那よりも大きくなる時が来た。あの店を伯父さんの店にしたいなら、相談に乗ってもいい。それに独立したいなら……」
「名取さん。いえ、社長。お世話になりました。あとのことはすべて彼女に、林芹那さんにお任せしてあります。アルバイトも彼女が目星をつけてあります。知り合いだそうですけどね」
「おい、落ち着けよ。悪かった。この間も言っただろ。本当にあいつが縁談相手だなんて知らなかったんだ」