美しき造船王は愛の海に彼女を誘う
「そう思いたいですけど、最初から自分の力で立つようにしないとこういうことになるんだと痛感したんです」
「それは考えすぎだ。大体このことを蓮に話してないんだろ。許すはずがない」
「別れたいわけじゃないんです。でも彼には彼の世界があるし、身分違いなのは縁談の話の大きさに驚いて痛感しました。私には少し落ち着いて考える時間が必要ですし、ありがたいことに独立のめどもつきました。今だと思うんです」
名取さんは私をじっと見て言った。
「清水。お前が……いつか自分の店を持ちたがっていることを知っていた。俺がそれを手伝ってやるつもりだった。できればパートナーとして。でもあいつが現れてあっという間にお前を搔っ攫っていきやがった」