美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

「……名取さん」

「あいつには学生時代から色々負けてきたからな。ついむきになってしまった。自業自得だな。芹那に騙された段階で俺の負けだ。諦めるよ。それで……ベリが丘を出てこっちに来るのか?」

「そうですね。伯父の病状も落ち着いたので時期的には今しかないと思います。二人は応援してくれると思います」

「わかった。こっちに来たらすぐに連絡しろ。うちをやめても関係は断ちたくない」

「ありがとうございます。名取さんに指導していただいたからこその受賞です。本当にありがとうございました。それと、彼にはこのこと絶対内緒にしてくださいね。社長を巻き込みたくありませんから。自分から言います」

「蓮を説得してからにしろ。そうじゃないとあいつは騒ぐぞ。お前はわかってないが、あいつは女を寄せ付けなかったのにお前だけは特別だった。それだけお前に執着があるんだよ」

 彼のことは考えるとつらかった。きっと怒るだろうなと思った。
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