美しき造船王は愛の海に彼女を誘う
その日、私は裏口から入るよう彼に言われた。彼はあれから外で私と会うのを避けるようになった。
人目を避ける。つまり、彼も噂を知って困っているのだ。隠れないといけないような関係だと言われているようでつらかった。
客室へ向かう廊下で相良さんとすれ違った。
「あら?清水さんじゃない。見たわよ、コンクール入賞おめでとう」
オーベルージュの制服とは違うパンツスーツ姿が決まっている。さすが店長。
この間とは違う、髪を結いあげて仕事の姿だ。たくさんの花束をカートに乗せて運んでいる。
「ありがとうございます」