美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 彼は鏡に映る抱き合う私たちを見せた。

 彼を待ち続けた身体は正直だった。どんな嘘もすぐに見抜かれた。

「さくら愛してるんだ……戻っておいで……そして僕の妻になるんだ」

 ずっと同じことをうわごとの様に口にしながら、何かをかなぐり捨てた彼は今までとは違って見えた。

 そして、ありったけの想いを身体で表現して、私を抱き続ける。

「ああ……!」

 あまりの激しさにすがりついた。彼の汗が身体に落ちてくる。
< 3 / 403 >

この作品をシェア

pagetop