美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

「あ、名取様でしたらすでに別なお客様とあちらのほうへおられます」

 窓際のくつろいだソファ席に向かい合って誰かと話している。手を差し伸べたバーテンに気がついたんだろう、こちらを見てにっこり笑うと手招きしている。

「清水。久しぶりだな」

 名取の目の前まで行くと、頭を下げた。背を向けて座っていた連れの人の顔を見た。

「……あっ!」

「……あれ、君……」

 お互いに目を見て一瞬固まった。

「あれ?もしかして知り合い?そうか、家が近いかも知れないな、店と……」
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