美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 そう言うと、彼は私を解放してくれた。水を持ってきたとき、彼は身体を起こしすでに服を着ていた。

「蓮さん、帰るの?」

「ああ、そろそろ迎えが来る。君も仕事だろ?」

「蓮さん……」

 彼は私をじっと見て言った。

「さくら、君は一年前、一緒に乗っていた船からひとり勝手に途中で降りた。だが、僕は一人ぼっちで船に取り残されている」

 この人……なんてこと言うんだろう。もう少し言い方が……。
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