美しき造船王は愛の海に彼女を誘う
そんなわけで結局丸一年帰らずにここまで来た。寒くなった。コートの襟を立てて駅舎を降りた。
彼はおそらく仕事だろうから、それまでに一度ビジネス街の店を覗いて来ようと思っていた。
伯父の家には明日戻るつもりだった。せっかく戻ったのに泊りもせず彼へ逢いにオーベルージュへ行くというのも言いづらい。
秋バラが大きく見事だ。私が店を出した時に植えたバラだ。大きくなった。中苗だったのがすっかり大苗になり大輪の花をたくさん咲かせている。
グラジオラス、ダリアも綺麗だ。色んな色のポットマムが鉢に植わって店先を彩る。秋の寄せ植えに合うポット苗がたくさんある。お客様が大勢花を見て選んでいる。店員がその相談にのっていた。客が落ち着いたころ合いを見て声をかけた。