美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 私にウインクをした。あっけに取られて私も口をぽかんと開けて見とれてしまう。嫌になるほどの破壊力。

 それに嫌な予感もする。彼の世界ってまさか……ベリが丘のセレブリティっていうことなの?

 顔なじみの美容師がいた。私と同じ櫻坂近く、東地区に店のある美容師の美穂さんだった。

「あ!」

「さくらさん。おはよう」

「美穂さん、どうして……お、おはようございます」

 彼女はにっこり笑うと私に言った。

「近所だし、頼まれるとここの仕事もしているのよ。さくらさんに私がするのね……でも嬉しいわ。あなたはとうとうラグジュアリーを提供する側から受ける側になったのね」

「美穂さん……私」
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