美しき造船王は愛の海に彼女を誘う
彼も素晴らしい仕立ての冬のビロードの濃紺のスーツに着替えてきた。後ろから私を鏡越しに覗き込んだ彼は満足そうだ。人目も気にせず、耳元にキスをひとつ落とした。
「うん、良く似合う。サイズもぴったりだったな。さすが僕だ。二週間前君を抱いただけですぐにサイズを把握した。褒めてくれ」
「……」
周りが彼の言葉に赤くなってる。恥ずかしいのはこっちよ。この人は人前でそういうことを平気で口にしてしまう。
「神崎様、清水様はこちらでよろしいですか?」
「ああ、ありがとう。今後とも彼女をどうぞよろしく。彼女のサイズ、似合う色などの情報はすべて記載しておいてくれ。これから必要となるだろう」
「かしこまりました」
「……あ、あの。ありががとうございました」