美しき造船王は愛の海に彼女を誘う
「お疲れさまでした」
美穂さんをはじめ、担当してくださった方に頭を下げる。皆さん笑顔で見送ってくれた。
「さあ、さくら。次に行くよ」
彼と共に出ると黒光りする見たことのある車の迎えが来ていた。
「え、どこに行くの?」
彼は私の左手を持ち上げて薬指を撫でた。
「ここに入れる証をね。一応予約していたんだ」
車はしばらく進むと、ベリが丘でも有名な宝石店の前で停まった。
最高級の宝石店だと言われている。外観もゴージャス。私はたまにウインドウ越しで外から飾られている宝石を眺めているだけだった。