美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 おかしい。つい笑ってしまった。名取は説明した。

「今日、隣のホールで神崎を見かけてね。あとで飲もうということになって、ここへ来たというわけだ。清水にも紹介してやろうと思ったんだ。何しろこのノースエリアにはセレブが多いが、かの有名な神崎造船の御曹司と直接知り合いになるのはさすがに難しいだろうと思っていたからな。すでに知り合いだったとはやるなあ、清水」

「いつもは神崎様の代わりに別な方がご注文にいらっしゃるので……神崎様に直接お目にかかったのは初めてです。」

「ああ、そうだな。椎名がいなかったから、今日は初めて俺が店に行ったんだ」

「いや、そうだとしても……今日俺が紹介していたから、これも運命だな」

 三人でカクテルを乾杯した。
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