美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

「いや、清水さんといったか。店の格好とは違い、見とれるほど素敵な装いだ。君は姿勢がいいんだね。それにとてもスレンダーでそのドレスがよく似合う。驚いたよ」

 私は店では汚れるので軽装だが、さすがに夜のこのツインタワーのラウンジに来るのにその恰好はない。今日は名前と同じ桜色のシフォンリボンで腰回りをかたどったシルクのロングドレスに、髪を綺麗に結って来た。

「……ありがとうございます」

「それで、ほら、報告してやれよ。花かごを作った本人にさ」

 花の仕事をする人はお洒落な人が多い。名取も同様だ。シルバーに薄い黄色のラメが入ったスーツをお洒落に着こなした名取は彼を促す。彼はさくらを見て恥ずかしそうに話した。
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