美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 彼はドレスを取り、ネックレスひとつにした私をゆっくり優しく愛した。

 その後、お風呂に入り遅いディナーを頂いた。静かな海の灯台の光が見える。この部屋にしたのは灯台まで見えるからだそうだ。さすが造船会社の玲瓏皇子。

「愛してるわ」

 ベッドに戻り、静かに眠っている彼の顔を見ながら囁く。すると、彼がぱちりと大きな目を開けた。

「……いま、愛してるって言った?」

「……ええ」

「初めて言ってくれた」

「自信がなかったの……口にしたら別れられなくなると思ってた。わたしあなたの奥さんなんだもの、もう大丈夫よね?」

 彼は何も言わず私を抱き寄せると口づけた。それが答えだと言うように……。窓の外には美しいクリスマスツリーが見える。きらめくイルミネーションが光の渦のようだ。

 ベリが丘で初めて、愛する人とのクリスマスを満喫した。ラグジュアリーな素晴らしい夜となった。まさか毎年それが続いていくなんて、その時は想像もしていなかった。

fin.
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