美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

「いずれ名取さんのように独立できるほどの力をつけて、店を大きくしたかったんです。ベリが丘といえばうちの『ブラッサムフラワー』と言われる店にしたかった。アレンジ教室でサウスエリアの新しい住宅街の方々をお客さまとして獲得したい。だめなら諦めます」

「ふーん、なるほどね。ただ、諦めるにはその作戦では少し脇が甘いんじゃない?」

「え?」

「名取フラワーズは国内で三本の指に入る大きな花のアレンジ会社だが、本拠はベリが丘にはない。しかも名取はここの住人ではない。でも君は違う。ここで育ち、ここベリが丘に愛着がある。ビジネスエリアに名取フラワーズの支店を出したらどうだい?」

「どういうことです?」

「君は名取を裏切ることもできないし、休職して迷惑をかけていると思っている。だから、彼に恩返しをしてからじゃないと天下取りに動けない」
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