美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

「神崎さん……」

「伯父さんの店と支店を合併させ半々の出資にしたらどうだろう。今後のことはその店の売れ行きを見て名取と相談する。君を支店長として任せるよう進言しよう。伯父さんの店の出資金が足りなければ僕が援助する。どう?」

 私をじっと見つめながら身を乗り出して話しだした。私には思いつかない提案だった。しかも出資するって……どうして?

「どうしてそこまでしてくださるんです?」

 黒のタキシードを着た彼はすっとその場を立ち上がり、なぜか私の隣の空いた席に座った。

 美しい顔をこちらに向け、夢のような言葉を並べながら彼は私に迫ってきた。

「言ったじゃないか。君はこれから僕の懐刀となって活躍してもらうよ、これからもいろいろと頼みたいんだ。君のような人を名取ひとりの懐刀にするのは許せないね」
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