美しき造船王は愛の海に彼女を誘う
「神崎……お前、信じらんねえ、おい……」
「それで、名取。ひとつ提案がある。協賛の件だが、このベリが丘のビジネスエリアに支店を出さないか?ただし条件がある。店長は清水さん。そして、清水さんの伯父さんの店と合併させる。伯父さんの店の支度金は僕が出資する。つまり彼女の店に協賛する」
私はびっくりして立ち上がった。
「神崎さん。ありがたいお申し出ですが成功するとは限りません。出資頂いてもお返しできない可能性も……」
彼は私を見ると、右手のひとさし指を立てて左右に振った。
「ノンノン、清水さん。僕を侮ってもらっては困るよ。君にこの話を僕自身がもちかけたんだ。先々を見通してないとでも思っているのかい?それは残念だ。僕はね、これでも日本有数の造船会社の副社長だ。悪いけど経営が本業でね。俳優じゃないんだよ」