美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

「……」

 俳優って……まさか朝……私が彼に言ったことを根に持ってるの?あれって一応、顔を褒めたつもりだったのに……。そういえば芸能人扱いされるの嫌がっていた。

 いや、そんなことはどうでもいい。ちょっと待ってよ。名取さんを見ると、今までにない真剣な目で神崎さんを見ていた。

「お前、いったい何を考えている?支店とか、俺の為でないことくらいなんとなくわかる。清水を取り込みたいのか?ただの花屋だぞ。それとも女として興味があるのか……それなら別のやり方にしろよ」

「名取。悪いけれどお前と一緒にしないでくれ。彼女の店がいいのは椎名が昔から使っていたのでわかっている。それに母も彼女の作る花束を気に入った。僕も今夜彼女に大きな借りが出来た。恩返しとは言わないが、少し面白そうだからね。ベリが丘の区長の頼みに顔も立つ」
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