美しき造船王は愛の海に彼女を誘う
蓮様は社長不在だと忙しくなり、食事がおろそかになりがちで、夫人はそれを知っているので側にいる。
案の定、ここひと月は恐ろしく忙しい。そんな時に自分は実家へ戻ることとなり、申し訳なく思っていた。
今日は久しぶりに出たので仕事が溜まって、さぞ蓮様は機嫌が悪かろうと構えていた。
ところが、なぜかすこぶるご機嫌であっという間に仕事を片付け始めた。私が戻ってきたから?そんなわけない。側近の自分が見たこともないほど上機嫌だ。
「何かいいことがありました?」
蓮は執務机のPCから玲瓏で端正な顔を秘書の彼に向けた。
「ああ。やっとお前が戻ってきたし、今日から楽ができそうだ」