美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

「そうじゃないでしょう」

「もちろんそれもあるぞ。他にも理由は……少しだけあるよ」

「素直ですね、妙に……」

「ああ、そうだな。お前にも関わってもらわねばならないからな。隠す気はないんだよ」

 私にも関わるとなれば仕事でしかない。まさか、私がいない間にまた新しい取引先を開拓したのか……彼は自分がびびっと何かを感じた相手とすぐに取引を結び、巨額の利益を手にしてきた。

 半年前から彼に付き従うよう言われてずっと仕事ぶりを観察してきた。社長には言えないが最近はっきりとわかってきた。彼は父親以上のやり手だ。わが神崎造船の未来は明るい。
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