美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

「そうだな。実は表立って会社経由ではなく、ほとんどを個人的にやろうかと思っている。もちろん、個人資本でね。でも冠は必要なら見せるかな」

 冠を見せる。つまり、必要ならうちの会社名を出すということだ。どういう意味だ?区長が欲しがっていたのはうちの冠だ。ブランド力。

 蓮様本人の資金を疑っているわけではない。もしや、副社長として何かをするということなのか?

「何をされるのです?」

 嫌な予感がする。この不思議な笑み。まずいぞ。

「うん、花屋をやろうかと思ってね、ふふふ」

 やっぱり。ろくなことじゃなかった。ため息をついた。
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