美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

 蓮の美貌と手腕は隠しようがなくなってきている。しかもこのベリが丘にあるノースエリア在住のセレブリティ。安心安全の花丸印というところだ。

 彼を婿にと希望するお相手の家柄はいわゆる上流社会にとどまらず、この国の重鎮といわれる政治家にも及んでいる。

 これでは社長も適当にあしらうのは無理というものだ。正直断りづらい。どうすればいいのか困っているのだ。

 なんと先日夫人が私におっしゃるには、社長が最近海外へ逃亡、いや出張しているのは、それもあってのことだと言う。

 姿をくらませばごまかせるということらしいのだ。信じられない事態だ。

 私が間に入り、あの手この手で断るにも竹帚(たけぼうき)程度ではもはや無理だ。鉄帚(てつぼうき)が必要かもしれないと思う今日この頃だ。
< 69 / 403 >

この作品をシェア

pagetop