美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

「さくら、今日はミモザにチューリップ。それにあなたの好きなフリージアも入っていたわ。もう春ね。櫻坂の桜のつぼみも大きくなってきたわ」

「おばさん、お疲れ様。花を店に入れるのは私がするから少し休んでちょうだい」

「そう?じゃあ、お願いしようかしら。春はなんだか眠いわねえ」

 あくびをした伯母は生花だけ先に冷蔵室へ運ぶと、鉢花や土、園芸用品や薬、土などを残して母屋へ入った。

 さくらはチューリップの球根が3つずつ植わった6号鉢を持ち上げるとカートに乗せずそのまま運んだ。

「咲いたー咲いたーチューリップの花があ、なーらんだー、なーらんだー、赤、桃、紫ー♪」

 すると、クスッと笑う声がする。後ろを見ると薄いブルーのサングラスをかけた背の高い若い男性が立っていた。
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