美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

「あ、いらっしゃいませ……」

「綺麗な色だな。そうか、この花色が『赤、白、黄色』じゃなかったわけだな」

 恥ずかしい、歌を聞かれた?そう、この鉢の三色は今つぼみで赤、桃、紫色なのだ。私はエプロンの前についた土を後を向いてたたき落とすと、彼に言った。

「はい……そうです。下手な歌をお聞かせしてお恥ずかしい……」

「いや、何とも言えない味のある歌だったよ。楽しそうな仕事ぶりで見ていてすがすがしいよ」

 うーん、さすがに恥ずかしすぎる。彼は真っ赤になった私を笑いながら見ている。

 サングラスをかけていても絵になる人っているのね。俳優さんかしら?さすがベリが丘。ノースエリアも近いので、会社の重役や芸能界の方もおられるのだ。
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