美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

「どうぞ」

「失礼します」

 彼の香水のかおりがする。

「素敵な車ですね。さすが副社長。でもご自身で運転なさるんですか?」

 運転席に乗ってきた彼はこちらをちらりと見て、ため息をついた。

「今日は特別だよ。危ないと騒ぐうるさい椎名を巻いてきたんだ。急がないと……」

「え?普段全然運転していないんでしょ?大丈夫ですか?運転代わりますよ」

 むっとした彼は私にかみついた。
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