美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

「……ええ?!」

 彼はふっと不思議そうに笑った。

「どうしてかな……まあ、いい場所だったからすぐに君に見せて自慢したかったし……」

「神崎さん、それにしても場所を押さえるのは行き過ぎでは?」

 彼はエンジンをかけ、車を発進させて答えた。

「店の場所を勝手に押さえたのは、他にも競合先があると地主から聞いていたからだよ。迷っている間に取られたら元も子もない。僕の資産はそういうときのためにある。仮押さえできる程度の金はあるからね。後悔したくないんだ」

 美しい横顔を見ながらため息をついた。この人は普通じゃない。なんというか、名取さんも社長だがここまでワンマンじゃない。
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