余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
男性の名はクリストフ・リリェバリ。王にアーミンを献上したあの男だ。三大勇者一族リリェバリ家の嫡子で現在22歳。勇者の証である上下白の軍服をきっちりと着こなしている。
一方で髪は少し遊ばせていた。髪油でしっかりと固めつつ分け目を右奥へ。ブロンドの髪がアイスブルーの左目に少しかかるようにセット。程よく抜け感を出すことで色気を演出している。漂う色香はアッサムを彷彿とさせた。薫り高く、それでいてほろ苦い。
彼の傍らにいる女性の名はシャロン・レイス。侯爵家の令嬢だ。青の巻き髪に濃紺の大きな瞳を持つ美女。纏う雰囲気は清らかでありながら儚げで、まさに『深窓の令嬢』といったところ。
だが、その瞳からは強い意思を感じた。冷たい炎を滾らせている。そんなイメージだ。憎しみ、嫌悪、侮蔑。エレノアは彼女から向けられるそれらの感情を受け止めきれず、小さく息を呑んだ。
「ええ。明日、王都を出ます。本日は陛下に出立のご挨拶を申し上げに参りました」
「慰問の旅とはまったくご苦労なことだ。それにしても……本当にその2人を連れて行くつもりなのかい?」
「禊、でございますので」
「無意味ではないかな? 彼らが反省し言動を改めるとはとても思えないのだが」
エレノアは促されるまま背後に目を向けた。レイモンドもウィリアムも揃ってクリストフを睨みつけている。前者からは嫌悪、後者からは軽蔑が伝わってきた。
「レイ、ビル。慎みなさい」
エレノアは護衛役である2人を愛称で呼んでいる。レイ=レイモンド。ウィリアム=ビルといった具合に。
「……申し訳ございません」
謝罪の言葉を口にしたのはビルだ。レイは彼には続かず、有ろうことか大きく舌打ちをした。謝罪の言葉は続きそうにない。
「まったく君という人は」
不愉快だ。そう言わんばかりにクリストフが表情を歪める。
「それでは我々は先を急ぎますので」
エレノアは話しを切り上げることにした。これ以上この場にいるのは得策ではない。そう判断したためだ。
「……お二人とも、どうぞお幸せに」
そう言って会釈一つに去ろうとする。そんな彼女に待ったをかけたのが、クリストフの現婚約者である聖女シャロンだった。
一方で髪は少し遊ばせていた。髪油でしっかりと固めつつ分け目を右奥へ。ブロンドの髪がアイスブルーの左目に少しかかるようにセット。程よく抜け感を出すことで色気を演出している。漂う色香はアッサムを彷彿とさせた。薫り高く、それでいてほろ苦い。
彼の傍らにいる女性の名はシャロン・レイス。侯爵家の令嬢だ。青の巻き髪に濃紺の大きな瞳を持つ美女。纏う雰囲気は清らかでありながら儚げで、まさに『深窓の令嬢』といったところ。
だが、その瞳からは強い意思を感じた。冷たい炎を滾らせている。そんなイメージだ。憎しみ、嫌悪、侮蔑。エレノアは彼女から向けられるそれらの感情を受け止めきれず、小さく息を呑んだ。
「ええ。明日、王都を出ます。本日は陛下に出立のご挨拶を申し上げに参りました」
「慰問の旅とはまったくご苦労なことだ。それにしても……本当にその2人を連れて行くつもりなのかい?」
「禊、でございますので」
「無意味ではないかな? 彼らが反省し言動を改めるとはとても思えないのだが」
エレノアは促されるまま背後に目を向けた。レイモンドもウィリアムも揃ってクリストフを睨みつけている。前者からは嫌悪、後者からは軽蔑が伝わってきた。
「レイ、ビル。慎みなさい」
エレノアは護衛役である2人を愛称で呼んでいる。レイ=レイモンド。ウィリアム=ビルといった具合に。
「……申し訳ございません」
謝罪の言葉を口にしたのはビルだ。レイは彼には続かず、有ろうことか大きく舌打ちをした。謝罪の言葉は続きそうにない。
「まったく君という人は」
不愉快だ。そう言わんばかりにクリストフが表情を歪める。
「それでは我々は先を急ぎますので」
エレノアは話しを切り上げることにした。これ以上この場にいるのは得策ではない。そう判断したためだ。
「……お二人とも、どうぞお幸せに」
そう言って会釈一つに去ろうとする。そんな彼女に待ったをかけたのが、クリストフの現婚約者である聖女シャロンだった。