結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「先生」

くんくん嗅ぐとワイシャツから先生の甘い匂いがする。
先生に抱きしめられているなんて夢を見ているのかな。

「九条さん、酔ってる?」

私を見て先生が聞いた。先生の声は低めなのに、通るいい声だ。
先生の声で名前を呼ばれる度に胸がときめく。

「ちょっとだけ」
「顔が真っ赤だよ」

先生が私の頬に触れた。ヒヤッとした指先の感触が気持ちいい。大好きな先生の手。触れてもらっているのが嬉しくて頬が緩む。さっきまでは絶望的な気持ちだったのに、先生は簡単に私を上機嫌にする。

でも、先生は……。

「先生」
「うん?」
「結婚するの?」

黒い瞳が大きく見開かれる。
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