結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「結婚するなら私として」

先生の瞳が左右に大きく揺れた。

あっ、困っている表情。

そうだよね。先生は政略結婚しなきゃいけないものね。今さら、何言っているんだって思っているよね。先生は何度も私にプロポーズしてくれたのに、私、断ったものね。

こんな事言っても遅いよね。

遅いのはわかっている。わかっているけど……。

泣いちゃダメだと思うのに、目の前の先生が滲む。

「……恋愛感情のない結婚でいいから、私として」

涙声になってしまった。ちゃんと言いたいのに、喉の奥が熱くなって、上手く言えない。

でも、伝えなきゃ。

「先生、私と……結婚して」

震える声で口にした時、私を抱きしめる先生の腕が強まる。しっかりとした先生の腕を背中に感じる。先生の体温も、規則正しい鼓動の音も聞こえる。切なそうな先生のため息も。

先生が側にいてくれるなら、もう何もいらないの。
だから、先生、私と結婚して。
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