結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「こう言ってはなんですが、そちらの方、先生とあまり釣り合っていませんね」

女性その4が言った。私みたいなブスが先生の隣にいるのは相応しくないと言っているよう。女の嫉妬は怖い。こんな調子で一時間、私は攻撃され続けるんだろうか。

「おっしゃる通り。彼女は僕のような男にもったいない素敵な女性です。魅力的な彼女に振り向いてもらえただけで、僕にとっては奇跡ですから」

先生の発言に女性たちが固まる。
私も固まった。お芝居だとはわかっているけど、なんとクサイ事を言うのだろう。

「僕は付き合って頂いている立場なので、彼女の気分を害するような発言は控えて下さいね」

先生が女性たちに厳しい表情を向ける。
場がしーんと静まり返った。女性たちが完全に引いている。

「桜子、向こうに行こうか」

私の肩を抱いて先生が歩き出した。先生から甘いコロンの香りがして、落ち着かない気分になる。これはお芝居なんだから、甘い言葉にも甘い匂いにも騙されてはいけない。
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