結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「認めなよ。先生が好きなんでしょ?」

舞子に見つめられ、認めるしかないと思った。

「うん。その、好きです」
頬をポリポリかきながら頷くと、舞子が嬉しそうに拍手した。

「桜子、何も困る事ないじゃん。好きな人と結婚するんだから」
「困るよ! だって先生は恋愛感情のない結婚を望んでいるんだよ。私が先生を好きだって気づいたら捨てられる」
「そうなの?」
「……多分」

正直言うと先生がわからない。私にプロポーズをした時の先生と、私にキスをした先生が違う人のように見えたから。

先生は私の事をどう思っているんだろう?
ふと、前に先生と交わした会話を思い出した。

――先生は私の事も絶対に好きにならないって事ですね
――当然です

ズキッと胸が痛くなる会話だ。
絶対に好きにならないなんて、よく考えると酷い。確かに私は美人じゃないけどさ。
あの時の言葉が本心ならやっぱり先生が私と結婚するのは恋愛感情とは別なんだろうな。

「先生は政略結婚よりも私と結婚した方が楽だから、私と結婚するって言い出したんだと思う」
「『人は嘘をつく生き物です』って、先生、講義の時話してなかったっけ?」
「え?」
「もしかしたら先生の言葉の裏に違う真実が隠れているかもよ。よく考えてみなよ。どうして先生は桜子にこの部屋を格安で貸してくれたの?」
「……それは私の事を心配して」
「心配してくれるって事は桜子の事を気にかけているって事だよね? 桜子は先生の気持ちを考えた事ある?」
「……先生の気持ち?」
「私に言えるのはこれぐらいかな」
「舞子、何か知ってるの?」

ふふっと舞子が笑う。

「さあ。どうでしょう」
「教えてよ」
「自分の頭でちゃんと考えなさい。ところで先生は? 隣の部屋にいるんでしょ? ここに呼んじゃう?」
「呼ぶなんてとんでもない!」
「いいじゃない。お隣さんなんだから。私だって先生にお世話になってるし」

舞子がソファから立ち上がる。
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