結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「気分を害していませんか?」

歩きながら、そっと先生が私に聞いた。まさか心配してくれているとは思わなかった。

「何とも思っていませんから大丈夫です」
「僕は不愉快になりました」

また意外な言葉が返って来た。

「さっきの人たちに怒ったんですか?」
「釣り合っていないなんて失礼です」
「仕方ないですよ。見目麗しい先生と並以下の容姿の私が並んでいたら釣り合っていないように見えますから」

先生が立ち止まり、寂しそうな表情をこちらに向ける。

「九条さん、なんで自分を貶めるような事を言うんですか。九条さんは綺麗ですよ。並以下ではありません」
先生の言葉を真に受けてはいけないと思うけど、頬が熱くなる。

「あんな事言われたら怒った方がいいです」

――九条さんはもう少し怒りなさい。

学生だった頃、同じような事を先生に言われた。私を都合よく利用する人がいて、先生はその事について私以上に腹を立てていた。

「怒る程の事ではありませんから」
「相変わらずですね」

呆れたような笑みを先生が浮かべた時、

(かい)くん! 来てくたれの!」

弾んだ声が背後でした。振り向くと、マーメードラインのウェディングドレスを着た花嫁がいた。
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