結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
グレーのスーツ姿の南係長が私がいるスチールラックの方に歩いてくる。

「すみません。探し始めた所で。お急ぎだったでしょうか?」

南係長は私の前で立ち止まった。

「先ほどの男性は恋人ですか?」

ドキッとした。一番聞かれたくない質問。

「大学の時の先生です」

動揺を隠したくて、できるだけ普通の声で答えた。

「どうして大学の先生が九条さんを抱きしめていたんですか」
「それは……」
「あの方は北沢不動産の北沢海人さんですよね?」

南係長、先生の事わかっていたんだ。

「はい」
「北沢海人さんは西園寺グループのお嬢様と結婚するそうですよ」

南係長の言葉にムカッとする。
なんで私にわざわざ結婚の事を言うの?

思わず睨み上げると、

「実は昨夜、婚約披露パーティーがホテルであったそうです。うちの支店長が招待されて行って来たそうです。うちも北沢不動産と取引がありますから」と南係長が話した。

知りたくない情報だった。
先生が帰って来れない理由がわかってしまった。そうか。婚約披露パーティーがあったのか。
< 134 / 173 >

この作品をシェア

pagetop