結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「大勢の人が北沢海人さんと西園寺詩織さんを祝福したそうです」

南係長、なぜ婚約パーティーの話をするの?

「パーティーがあったホテルにそのまま北沢海人さんと西園寺詩織さんが泊まったそうです。ベリが丘にあるラグジュアリーなホテルですよ。豪華なスイートルームに二人で泊まったんでしょうね。キングサイズのベッドで並んで眠る北沢海人さんと西園寺詩織さんは幸せだったでしょうね。婚約したんですから」

先生と詩織さんがキングサイズのベッドで眠ったなんて話聞きたくない。
嫉妬で胸が押しつぶされる。

南係長、酷い。

「なんでそんな話するんですか」
「九条さん、北沢海人に騙されてはいけません。北沢海人は絶対に西園寺詩織さんとは別れませんよ。(みかど)の命令には逆らえないんですから」
「帝って誰ですか?」
「北沢海人の祖父にあたる人物で、北沢不動産の創業者の事です。北沢不動産グループの中では帝と呼ばれて恐れられています。西園寺詩織さんとの婚約は帝の命令だと聞きました。だから北沢海人は断れない。断るなら北沢家と縁を切る覚悟が必要です」
「……北沢家と縁を切る」

そこまで大変な事になっていたとは知らなかった。

「普通に考えて無理ですよ。北沢海人だって実家の力は欲しいでしょう。彼の研究資金の援助を北沢不動産がしているという話も聞きます。つまり北沢家と縁を切ったら研究者としての彼の仕事にも影響が出てくるという事です」

西園寺詩織さんとの婚約がそんなに重たいものだったとは知らなかった。

「北沢家と縁を切ったら北沢海人は全てを失いますよ」

私のせいで先生が全てを失うのは嫌だ。先生を不幸にしたくない。
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