結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
5階でエレベーターを降りて、父の病室に行く。
スライド式のドアを開けると、父の陽気な笑い声が聞こえた。

ベッドに横たわる父が瑠璃さんと話していた。

「桜子、来たか」

青い病院着姿の父が私を見た。
思ったよりも元気そうで良かった。

「手術は終わったの?」

父が不思議そうな表情を浮かべる。

「手術? ぎっくり腰のか」

うん? ぎっくり腰?

「心筋梗塞じゃないの?」
「誰がそんな事言ったんだ。俺が病院に運ばれたのはぎっくり腰で動けなくなったからだ」

えっ……。ぎっくり腰だったの!

「心配させないでよ! 凄く心配だったんだよ。本当に心配で胸が張り裂けそうだったんだから」

ぐすっと涙ぐむと、父が驚いたように太眉を上げた。

「桜子。心配してくれるのか」
「当たり前じゃない。だってお父さんだよ」
「お前、死んで欲しいと思う程、お父さんを憎んでいたんじゃないのか?」

えっ!? 死んで欲しいなんて思った事ない。
どういう事?
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