結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「何言ってるの? そんな訳ないじゃない。なんでそう思うの?」

父の目が大きく左右に揺れた。

「いや、だって、お前は……」
「桜ちゃんは心筋梗塞ぐらいじゃないと来ないと思ったのよ。でも、桜ちゃんも嘘をついたんだからお相子よね」

父の言葉を遮るように瑠璃さんが言った。

「北沢海人と結婚だなんて大嘘よくついたわね。北沢海人は西園寺グループのお嬢様と婚約したそうじゃない」

瑠璃さんの吊り上がった目がこちらを見る。
瑠璃さんから突きつけられた女性週刊誌には北沢海人と西園寺詩織が婚約した事が書いてある。

「桜ちゃんが嘘ついたせいで、藤堂建設からの仕事が減ったのよ。素直に藤堂さんと結婚しなかった桜ちゃんのせいよ!」
「おい、やめないか」

父が瑠璃さんに言う。

「あなたも桜ちゃんに責任を取ってもらわきゃいけないって言ってたじゃない。桜ちゃんのせいで九条建設は倒産の危機なんでしょ?」

倒産の危機……。
父を見ると弱々しく微笑んだ。

「そんなに業績が悪化しているの?」
「藤堂さんから仕事を回してもらえなくなったからな。仕事なら北沢建設からまわしてもらえばいいと言われてな。それでな、北沢建設さんに頼みに行ったんだよ。北沢海人の名前を出したんだが、相手にされなかった」

沈んだ父の声を聞いて胸がしめつけられる。
北沢建設にまで仕事をもらいに行ったんだ。
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