結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「なっ」

驚いて仰け反ると先生がクスクス笑う。

「軽井沢での合宿のキスを再現してみました」
「えっ」
「本当は覚えてますよ。桜子の事が好きだからキスしたんです。だけど、君はあの日からより一層僕に冷たい目を向けるし、強引な事をしたから嫌われたと思ったんです」
「私が悪いって言うんですか! 勇気を出してキスの事を聞きに行ったのに、先生は派手めな女性とキスしてたじゃないですか」
「あれはタイミングが悪かったです。僕だってしたくてした訳じゃないんですよ。不意を突かれてキスされたんです。それに生物学的に言うとあの女性は男性です」
「はあ?」
「トランス女性です。僕の研究サンプルとして協力してもらったんです。あの時はトランスジェンダーの心理を研究していたので」

初めて聞く話に何と言ったらいいかわからない。
うーん、あの派手な女性はトランス女性だったのか……。

もしや先生の周りにいた派手な女性はみんなトランス女性だったの?

「あの、つかぬ事をお聞きしますが、先生の研究室をよく訪ねて来られた派手な格好をした女性の方々は」
「研究に協力して頂いた方たちです。普通の女性もいらっしゃいましたが、トランス女性が多かったですね」

知らなかった。てっきり先生は派手な女性を好むのだと思っていた。

「先生の恋人シリーズではなかったのですね」
「なんですかそれ?」
「いや、学部内で先生の研究室を訪れる女性たちはみんな先生の恋人だという話がありまして」
「勝手な事をおっしゃいますね。恋人を職場に招く訳ないでしょう。恋人と会う時はプライベートで会います」

言われてみれば確かにそう。いろいろ先生に対して勘違いしていた事に気づいた。
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