結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「先生、ごめんなさい」
「なんで?」
「だって……」

俯くと、先生がポンポンと私の頭を撫でてくれる。
とっても優しい触れ方だった。

「大丈夫ですよ。由梨花の事はちゃんと思い出になっているから。桜子に出会えたから由梨花の死を乗り越えられたんですよ。君は僕の恩人です。ありがとう」

こんな私でも先生の役に立てていたと思ったら、嬉しくて胸がじんわり熱くなる。
そして、褒められ慣れてないから、ちょっと照れくさい。

「大した事してませんよ」
「してますよ。君の存在が僕にとってどれほど大きいか。君がお見合いをしたという話を聞いた時は肝が冷えました。何とか君をつなぎ止めたくて必死だったんです」

そうだったの!?

「まさか、それで『恋愛感情のない結婚』って言いだしたんですか?」

先生が大きく頷いた。

「君と関わりを持ちたかったんです。あの時は君に嫌われていると思っていたから、ああ言うしかなかった」
「そんなに私、先生を嫌って見えました?」
「はい。好きだと言ったら、ビンタの一発もされるかと思いました」

私、そんなに嫌悪感漂わせていたんだ。先生に気持ちを知られたくなくて、必死だっただけなんだけどな。

「この部屋を貸したのだって君を助けたいという気持ちと一緒に下心もありました。でも、君に叱られて、公平なやり方ではなかったと反省しました」
「反省したんですか?」
「物凄くしました。だから隣から引っ越したんです」

先生が引っ越したと聞いた時の衝撃を思い出す。あの時、取り返しのつかない事をしたと思って後悔した。
< 159 / 173 >

この作品をシェア

pagetop