結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「桜子こっち」

先生が私の手を引っ張り、ベランダに出る。
船は港から離れていた。

「間に合った」
「何です?」
「夕焼けです」

先生が空を指す。
さっき見た時は青空だった空がオレンジ色に包まれ、海も夕焼け色に染まっている。
船から見る夕焼けがこんなに美しいとは知らなかった。

胸の中が感動でいっぱいになる。

「桜子とこの景色を見たかったんだ」
「嬉しい。ありがとう」
「桜子」
「はい」
「一緒に年を取ろう。綺麗な景色を見たり、美味しいご飯を食べたり、いろんな所に行こう」

頷くと先生が私の左手を取り、薬指にダイヤの指輪をつけてくれた。

「桜子を一生、愛すると夕陽に誓うよ」

クサイ台詞に笑ってしまう。
だけど、涙が出る程嬉しい。

「私も夕陽に誓います。海人さんを一生愛するって」

微笑んだ先生の目にも薄く涙があった。
夕陽の下で誓いのキスをする。優しい先生の唇を感じながら、先生と一緒にいられる幸福を感じる。

先生と出会えて本当に良かった。

終わり
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